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設計段階で残価をつくるということ──建築家が語るロングライフ建築
「残価設定型住宅ローン」──30年後も価値が残る家とは 最近、ネットなどで見る「 残価設定型住宅ローン 」 本来は車の購入で使われる概念ですが、住宅にも同じ発想を適用しようという動きが出てきています。 簡単に言えば、**20年後・30年後にどれだけ価値が残るか(=残価)**を前提にして家づくりを考えるということです。 売却時に評価される家とはどんな家なのか。また、未来に価値が残る家をつくるために、設計者が今しなければならないことは何なのか。 その本質を、建築家としての視点から整理してみます。 ■ 残価は「自然に生まれるもの」ではなく「設計するもの」 残価は、ただ長持ちすればついてくるわけではありません。 30年後に価値を保つ住宅には、次のような“意図的な設計”が必要です。 ● 気候に適応したパッシブデザイン 深い庇による日射のコントロール 北海道・函館の気候特性をふまえた断熱・気密・窓性能 風雪を避け、雨仕舞いまで計算した外観デザイン計画 ● 耐久性とメンテナンス性 風雨に強く劣化しにくい外壁 メンテナンスがしやすい納まり 長期的に交換が可能な設
建築設計 キタザキ アーキテクツ
6 日前


震度5の揺れで気づいたこと──木造住宅の柔らかさと、構造計算が持つ本来の意味
昨夜の深夜、震度5の地震 かなり揺れを感じたが、同時に木造住宅の“しなり”や“柔らかい構造体としての特性”を改めて実感した。 ほんと、木造建築は柔らかいですね! 住宅設計において、今もっとも重要だと感じているのは、 デザインと構造計画を同時に成立させること 最近、困ってる設計者から構造計算のみを依頼されるケースが増えているが、 設計段階で構造計画が十分に検討されていない図面に出会うことがある。 例えば、 無理にスパンを飛ばして張り間が大きい梁 一点に荷重が集中している柱 意匠的な理由で耐力要素が不足しているプラン モジュールや間取りが構造区画と噛み合っていないケース こうした状況では、構造計算で安全性を担保しようとしても、無理な補強や過重設計になりがちで、本来の建築思想から離れてしまう。 だからこそ、 設計段階から構造計画を行い、構造計算を“最後の確認作業”にするべき だと思っている。 建築はデザインと構造が両立して初めて成立する。 そしてもう一つ重要なのは、 現場で図面通りに施工されること。 どれだけ図面が良くても、現場で省略・変更されてしまえ
建築設計 キタザキ アーキテクツ
12月9日


見えない検証こそ、家の価値を決める――丁寧な設計と監理の理由
建築設計において、「どこまでチェックするか」「何をどの精度で確認するか」 この基準が、家の性能・安全性・耐久性を大きく左右します。 私は、意匠設計だけでなく、構造計算、省エネ計算、現場監理まで自分自身で行い、 項目ごとの検証作業を徹底しています。 1. プランごとの許容力度計算による耐震等級3の確保 一般的な住宅では壁量計算が主流ですが、僕はプランが変わるたびに許容力度計算を行い、構造バランスと安全性を検証しています。 これにより、間取りの変更による耐震性能の低下を防ぎ、計画段階から安定した構造設計が可能になります。 2. 北海道の性能基準に対応した省エネ設計 函館市近郊の気候条件(積雪・寒冷・日照の少なさ)を踏まえ、UA値・Q値・気密性・窓性能・熱橋対策を総合的に検討し、省エネ適合性判定レベルの図書を作成しています。 特に北海道では、断熱・気密・換気の精度が暖かさと結露リスクを左右するため、慎重な検証が欠かせません。 3. 現場が近ければ平日ほぼ毎日の監理体制 施工精度を高く保つため、現場へ足を運び、図面との整合性や材料の確認、施工手順のチェッ
建築設計 キタザキ アーキテクツ
11月14日


雪と陽のあいだに生きる建築 ― 道南の冬を愉しむために
寒い冬の季節が始まります。 外は冷たい風が吹き、外出するのも少し億劫になる時期です。 スキーなどウィンタースポーツを楽しむ人にとっては待ち望んだ季節かもしれませんが、 多くの人にとって冬は「できるだけ外に出ないで過ごす季節」でもあります。 そんな冬でも、建築のあり方次第で日常は変わります。 たとえば、高い断熱性能と気密性能を備えた建物に、トリプルガラスの大きな窓を設けることで、寒さを遮りながらも冬の陽射しをたっぷりと取り込むことができます。 外は雪に覆われていても、室内は穏やかで、静かな明るさに包まれる。 そして、窓越しに広がる白い景色が、暮らしの中に「季節の美しさ」を届けてくれる。 断熱性能と省エネ性能をしっかり両立させることで、冬でも開放的に暮らすことは可能です。 「寒さを我慢する」のではなく、「冬を愉しむ」方向へと建築を導くことができると思っています。 北海道の冬は長く、日照時間も短い。 だからこそ、陽をどう取り込み、雪景色をどう暮らしに溶け込ませるかが大切です。 閉じこもる冬から、開かれた冬へ。建築がその橋渡しになれたらと思います。
建築設計 キタザキ アーキテクツ
11月11日


地域に根ざす建築デザイン|函館から広がる設計の可能性
デザインのふり幅は大きく、それこそが設計の可能性を広げる力になる。 小さな空間にも無限の工夫があり、大きな建築には壮大な物語が宿る。 シンプルにもできるし、複雑にもできる。伝統を引き継ぐこともできれば、 未来を先取りすることもできる。 そのふり幅を恐れずに受け入れることで、...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
9月19日


函館の建築家が語る木造建築の未来|屋根下で壁を遊ばせるデザイン
木造にRC造のようなデザインを求めるのは、少し無理がある。 RC造の壁は、そのままシンプルに屹立することができる。 しかし木造の場合、通気層や笠木などの部材が必要になり、どうしても“付け足し”の要素が増えてしまう。 だからこそ、木造には木造が“なりたい形”を考えてあげる...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
9月5日


ワクワクを提案する建築家へ ― 技術と感性を両輪にした住まいづくり
ワクワクを提案する建築家でありたい 建築家として、構造計算や省エネ計算のスキルを持ち、 それを適切に使いこなすことはとても大切です。 建物の安全性や快適性を担保するために、技術的な裏付けは欠かせません。 しかし――クライアントが心から望んでいるものは、必ずしも「省エネ性能値...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
9月3日


インフレに負けない住宅設計|函館近郊で叶える安定した家づくり
長期間(1〜2年)にわたる設計期間を経ると、予定していた建設費に合わせることが難しくなっています。 2025年時点ではインフレの影響もあり、建設費は高騰しています。 そのため、設計にはスピード感が求められます。 具体的には、以下の項目を早めに確定させることが重要です。...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
9月2日


完成より、その後を大切に──15年暮らして気づいた建築の心得
経年劣化を意識した設計の心得 建築は、完成した瞬間がゴールではありません。 むしろそこから始まる「時間との付き合い方」が、建築の本質を決めていきます。 だからこそ私は、設計の段階から「経年劣化」を意識することを大切にしたいですね。 たとえば外壁や屋根...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
8月25日


暮らしの変化に強い家づくり──函館の建築家が語る引き算の有能さ
色々な要素を盛り込んだ平面計画は、設計打ち合わせの場では建て主に 喜ばれるかもしれない。 設計者にとっても、自らの工夫や能力を示し、有能さをアピールする機会になるだろう。 しかし、実際に住み始めてからは事情が変わる。 住まい手の好みや生活習慣は時とともに移り変わり、新しい趣...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
8月22日


設計料の裏側に隠れた建築の価値-----見えない丁寧さを知る
人は、どうしても目に見える数字だけで判断してしまう。 建設価格、設計料――それだけが家づくりの価値だと思われがちだ。 しかし、その数字の裏には、目に見えない時間と手間が隠されている。 構造計算、構造計画、BIM、VR、省エネ計算。それらを統合し、単なる図面ではなく、「建てら...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
8月20日


夢を描く前に壊す現実。リノベーションという設計の難題
今年はリノベーション相談が多く、 一戸建て住宅のリノベーションの予算をどれだけ掛けるのか 相談事例紹介します。 予算は、物件取得費用とは別途で、2,000万円前後の予算を 計画されている方々多かったのが印象的ですね。 以前は、予算500万円とかローコストでの相談だったのが、...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
7月22日


北海道の梅雨のような湿気を1台で快適建築家自邸で実証した冷房設計
30坪の自邸は10帖用エアコン1台で冷房できるのか? ──築15年の建築家住宅「サクラハウス」での検証 建築家としての自邸「サクラハウス」を設計したのは15年前 当時のフラット35・省エネ基準に基づき、高断熱・高気密の設計を試みました。 気密測定試験を工事中に実施...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
7月11日


建築設計に終わりはない? 建築家が悩み続ける理由
建築設計は、複雑で奥深い思考の積み重ねだ。 設計の検討項目は、実に多岐にわたります。 まず目に見える「デザイン」 空間の美しさ、プロポーション、光の取り込み方、素材の質感など、感性に訴える要素を丁寧に組み立てていきます。 しかし、それだけでは建築は成り立ちません。...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
7月9日


【函館の建築家が考える】将来に強い家づくり──構造体と間取りを分けて考える理由
構造体から間取りを開放するという設計思想 ── ロングライフな家づくりのために 住宅の設計において「間取り」は暮らしを形づくる重要な要素です。 しかしその一方で、 構造体の制約によって間取りが縛られてしまうこと は少なくありません。 僕は、 構造体から間取りの制約を開放する...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
7月7日


15年前の空と、10年前の設計図
15年前の窓と、10年前の隣家設計 15年前、もし隣に家が建つとわかっていたら—— 僕は、もっと大きな窓を設けていたと思うし、その位置も、ほんの少し変えていただろう。 視線をわずかにずらすだけで、見える景色は大きく変わる。...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
7月4日


木漏れ日は沈黙の言葉で空間を満たす
木々のあいだから差し込む光 それは、何も語らず、ただそこに在ることで空間をやさしく満たす 沈黙の中にある言葉 音のない世界 影と光がまじわるそのとき、時はそっと歩みを緩める。 私たちの時間感覚は、建築や自然のふるまいによって静かに調律されるものなのかもしれません。...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
7月2日


家の空気を決める、玄関デザインという視点
玄関ドアを開けた「一瞬」で、家が語りかけてくる 玄関ドアを開けたときの「空気感」何気ないけれど、すごく大事 ふわっと包まれるような空気 聞こえる音、 ほんのり香る木の薫り その家の空気に一歩足を踏み入れた瞬間、人は無意識に 「安心できるかどうか」を感じとっています。...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
6月26日


建築家がつくる「時間の風景」──サクラハウス・クリハウス・ヌプハウスの朝
クリハウス ── サクラハウス・クリハウス・ヌプハウスの朝5時 初夏、早朝5時静まりかえった空間に、一本の光が差し込む それは、偶然ではなく、意図して仕掛けた光 この時期、この時間 一年のうち、ほんのわずかな季節にだけ現れる、建築家の「光のいたずら」...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
6月25日


流行りの建築との間合い
SNSや雑誌でよく見かける「流行りの建築」 素材、色使い、間取りの傾向、建物の輪郭さえも、ある種の「トレンド」が生まれては消えていく様子を独立してから20年、日々意識して仕事してます。 でも、設計者としてこうした流行をまったく無視することはできませんよねー...
建築設計 キタザキ アーキテクツ
6月24日
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