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第2回階段の途中で振り返る 運と縁が連れてきた「樹間の家」

踊り場に立って下を見下ろしてみる。

独立して20年

これまで手がけてきた仕事を振り返ると、不思議なことに気づく

どの仕事も実力だけで手に入れたとは思えない、、、だ!


もちろん設計者だから、設計する力は必要でも仕事が始まるきっかけは、

実力よりも運や縁によるものの方が大きい気がするし、自営業をしている人なら、

きっと共感してくれると思う。


仕事は努力だけではやって来ない。

運なのか?

縁なのか?

あるいはその両方なのか?

自分でもよく分からない。

ただ、振り返ると「なぜそんな流れになったのだろう」と思うような出会いがたくさんある


だから今でも、自分は運がいいと思うようにしている。

そう思えなければ、この仕事を続けるモチベーションも保てない気がするからだ。


そんな不思議な縁から始まった住宅がある。


当時、建築家として建てた自邸で暮らして1年、、、

住宅街の中に建つ家で、人通りはそれほど多くないけど、近所の人が散歩をする程度の静かな道沿いである。


その道を毎日のように愛犬と散歩していた女性がいた。

後から聞いた話だが、その方は毎日私の家を眺めていたらしい。


当時は事務所の看板も出していなかった。

ここが設計事務所だと分かる要素はほとんどない。


ただ、普通の家とは少し違って見えたそうで、、、

「停まっている車も外車だったし、普通の仕事をしている人じゃないと思った」


初めて会った時、そんなことを言われた。

今思うと少し笑ってしまう


確かに普通ではない家で、普通ではない仕事をしている、普通ではなさそうな人に見えたのかもしれない。


そんなある日、その方が偶然私のホームページを見つけて、驚いたそうだ。

毎日気になっていたあの家が掲載されていた。


そこで初めて、その住宅が建築家の自邸であり、設計事務所でもあることを知ったという。

弱小の一人事務所でも、ホームページを見てくれる人はいる。

そんなことを実感した出来事でもあった。


さらに話は続く

その方は家の建て替えを考えていた。


しかも建設予定地は自邸から徒歩1分

走れば30秒!


建設地は、手入れの行き届いた広い敷地だった。


ある日曜日の夕方

家の前で車を洗っていると、突然「ここ、設計事務所なんですよね」と声をかけられた。


そのまま流れで家の中を案内することになった。

今で言えば予約のないオープンハウスである。


僕と妻は驚いた。


けれど近所の方だということも分かり、昔から聞き覚えのある名字でもあった。

そのまま設計の相談になり、後日正式に依頼をいただくことになった。

聞けば、以前相談していた工務店のプランに納得できなかったそうだ。


効率の良い四角い箱、、、それは決して悪い建物ではないだろうが、でもそこに住む未来を想像した時、心が動かなかったのだろう。


そんな時に見つけたのが僕の家だった。


正直に言うと驚いた!

自宅の近くに設計したい。


そんなことを漠然と思ったことはあったけど、本当にその機会が訪れるとは思わなかった。

しかも毎日通る場所である。

設計者として、これほど身近な場所に建物を残せる機会はなかなかない。

敷地には古い木造倉庫があり、代々受け継がれてきた風景が残っていた。


立派な樹木もあった。

私はそれらを消すのではなく、風景に溶け込むような建築を考えた。


広い庭を眺めるリビング二階には軽い運動もできるセカンドリビングそして先祖代々受け継がれてきた土地や樹木を感じながら暮らせる住まい


そんな思いから、この住宅を「樹間の家」と名付けた。


こうして文章にすると、出来すぎた話に聞こえるかもしれない。


でも振り返ってみると、案外こんなもの建築の仕事は、図面を描く前から始まっている。


偶然見つけたホームページ

毎日の散歩道

日曜日の夕方の洗車


どれか一つ欠けていたら、この家は生まれていなかったかもしれない。


仕事は実力だけではやって来ない運や縁もまた、建築をつくる大切な材料なのだと

そんなことを、踊り場から下を見下ろしながら思い出した。


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