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夢と現実のあいだで|予算と向き合いながら建築をつくるということ

僕は、建築プランの比較で選ばれる、いわゆる「コンペ」には参加していない。


同様に、建築費を複数社で比較する“相見積もり”の進め方も基本的には行っていない。


もちろん、クライアントに指定の工務店がある場合や、比較したいという要望があれば、僕が信頼している工務店とクライアントが指名する工務店(ここ重要)での、見積もりを取ることは可能だ。


ただし、それはあくまで「より良い建築を実現するための手段」であって、「価格だけで選ぶためのもの」ではないと考えている。



例えば、最初に「予算4,000万円」と提示された場合、私はその範囲の中で現実的に実現可能なプランを提示する。


もしかするとそれは、クライアントにとって“夢が削ぎ落とされた案”に見えるかもしれない。


けれども、最初から実現不可能な夢を並べたプランを提示し、選ばれたあとに予算オーバーで苦しむ――その先にあるのは、決して幸せな建築ではない。


だからこそ私は、現実に即した提案からスタートする。そしてそこから、対話を重ねながら、理想や夢を少しずつ現実へと引き寄せていく。


建築とは、最初の一案で決まるものではない。

むしろ、そこからのプロセスこそが本質だと思っている。


クライアントのアイデアや価値観、日々の暮らしへの想い。

それらを丁寧に受け取り、何度も打ち合わせを重ねながら、空間へと昇華していく。

この積み重ねこそが、建築を唯一無二のものにしていく。


今は、CGや動画、そしてVRによって、空間をリアルに体験できる時代になった。

それでもなお、「夢と現実のあいだを行き来しながら最適解を探る」という営みは、人と人との対話の中でしか生まれない。


AIにはまだできない領域だと思っている。


だから私は、最初の提案が理想と違っていたとしても、そこで終わりではなく、「ここから一緒に良くしていける」と前向きに捉えてくれるクライアントと仕事がしたい。


建築の打ち合わせには時間がかかる。

エネルギーも必要になる。それでも、そのプロセスに向き合う“体力”を共有できる関係性があってこそ、本当に良い建築が生まれる。


さらに今は、建設費の高騰や世界情勢の影響により、価格の変動が大きい不確実な時代だ。同じ建物でも、時期によってコストは大きく変わる。


だからこそ重要なのは、条件の良し悪しだけではなく、変化に対応できる柔軟な関係性だと思う。


共に考え、共に悩み、共に決断していく。

その積み重ねによって築かれる信頼関係こそが、不確実な時代において最も強い設計条件になる。


私は、そんな関係性の中で建築をつくっていきたい。


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