エアコン1台で家全体を快適に保つには?設計でできること
- 建築設計 キタザキ アーキテクツ

- 7月8日
- 読了時間: 3分

【実測】エアコンは2階に1台設置
それでも1階の湿度が下がった話
― 「空気を設計する」ということ ―
湿度63%だった1階が、3時間後には59%になっていた。
エアコンは2階に設置している。
理由は、景色を優先して大きな窓を西側に付けたため、夏の西日で室温が30℃くらいまで上がるため。
1階にエアコンは設置してない。
普通に冷房運転をさせて、1階の室温と湿度を下げるられるようエアコン設置場所には検討を重ねた。
結論、エアコン稼働から3時間後、湿度63%→59%へ
こういうとき、改めて「設計で空気は動くんだな」と思わされます。
もちろん、毎回こうなるとは限らない。
外気温の状態、室内の間取りや断熱性能、気密性能、、、これらの要件で空気の流れは変わる。
ただ今回は、想定していた通りの結果が、実測という形で現れてくれた。

「冷気は下に落ちる」だけじゃ足りない
2階リビングの階段から離れた壁に設置したエアコンから1階に降りる階段に向けてエアコンの風向きと風量を設定することで、西日による室温上昇を抑えながら、1階ピアノ室の湿度を下げることが狙い。
確かに、冷たい空気は重くて下に降りていく。
でもそれだけで、階をまたいで湿度が変化するほど、空気は素直じゃない。
空気の流れは、間取り・天井高・階段の位置・窓の高さ・西日・熱交換型換気システムさ採用、高いレベル施工された気密性能——そのすべての関係性によって決まる。
目に見えないものだからこそ、意識しなければすぐに“滞留”してしまう。
今回はうまく1階へ冷気が落ちて湿度が下がったけれど、これからの季節、西日が強く差し込む猛暑日やなどでは、思うように空気が動かないこともある。

湿度4%の変化は、「小さな変化」ではない
63%→59%
一見わずかな変化に思えるかもしれない。
でも、エアコン設置してない1階の湿度が自然に下がるというのは、実はかなり難しい。
今回のような結果が出る背景には、
高気密・高断熱性能
熱交換型の換気ユニット(1階・2階)
冷気の落下と空気の循環を促す間取り構成
……など、いくつもの設計的な要素がかみ合っている。
ただしこれも、すべての建築で再現できるわけではない。
建物の規模、生活スタイル、地域性によって、同じ工夫が通用しないこともある。
だから、僕の設計している最新の建築では1階と2階にエアコンを一台ずつ設置している。
空気は“設計”しないと、動かない
「設備の性能」で快適さをつくるのは、ある意味では簡単ですよね。
でも、それではエネルギー負荷が大きい。
だからこそ僕は、間取り・断熱・気密・窓の位置・換気までを含めて、建築設計として空気の流れをつくることを大切にしている。
空気は見えないけれど、動きには必ず“理由”がある。
設計にそれを織り込めば、夏の暮らしを快適にする2階エアコン1台で家全体が心地よくなるということは、現実に起こり得る。
ただしそれは、「たまたま風が通った」ではなく、丁寧に積み重ねた設計の結果としてのみ成り立つ話だと思っている。
おわりに
湿度63% → 59%
この変化を、「たった4%」と見るか、「設計の力」と見るか。その先にある住まいの快適さを、これからも追い続けていきたいと思う。







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