呼びかけから始まる建築
- 建築設計 キタザキ アーキテクツ
- 17 時間前
- 読了時間: 2分

その家に、名前がつくまで。
「名前って、もう決まってるんですか?」
設計がひと段落した頃、住まい手からそんな質問を受けることがある。
でも私たちの場合、多くはそのとき、まだ決まっていない。
名前は、自然と浮かんでくるものだと思っている。
打ち合わせを重ね、家族の話を聞き、敷地に何度も足を運び、
スケッチを描きながら、ようやく、建物の“性格”のようなものが見えてくる。

たとえば、ある家。高台にある静かな敷地に建てた切妻屋根の家だった。
外観はとても控えめで、まるで風景に溶け込むような佇まい。
でも、内部空間に入ると、思わず声が出る。
大きな窓から、函館の街が一望できる。海と空と街がつながって、
まるで風景の中に浮かんでいるようだった。
ある日、設計中の資料にふと「ゼッケイハウス」と書き添えてみた。
仮の名前のつもりだった。
でも、どうにもそれ以上の名前が見つからなかった。
それは、私たちの中に芽生えた、この建物への“呼びかけ”だった。
こうして、ひとつの家に名前が生まれた。
私たちキタザキアーキテクツが建てる家の多くには、名前がある。
それは、建物に個性があるから。そして、そこに住む人にも、土地にも、
それぞれの物語があるから。
家を設計するということは、その物語に耳をすますということ。
そして、その物語にふさわしい“呼び名”を見つけることなのだと思う。
Comments